第3回は、税金に関わる「年収の壁」のうち、配偶者を扶養する方、子などを扶養する親の税金に関わる壁を中心にご説明します。
今回のポイント
・税金には、他にも「103万円の壁」があるのか?
・「150万円の壁」「201万円の壁」とは何か?
・税制改正により、どう変わるのか?
・手取りを増やすためにはどうしたら良いのか?
今回も、忙しい皆さんのために、できる限り分かりやすい説明を心がけます。
1. 配偶者を扶養する夫などの税金に関わる壁
(1)税金には他にも「103万円の壁」があり(配偶者控除の壁)
パート、アルバイトの給与がある配偶者(例えば、妻)の年収が103万円以下であれば、その方を扶養する夫の所得税を計算する際に配偶者控除の対象となります。
今回の税制改正で、この103万円の壁が123万円の壁に移動します。
具体的な控除の額としては、夫の合計所得金額が900万円以下の場合は、38万円の控除を受けられます。
なお、夫の合計所得金額が900万円を超えると控除額が段階的に減らされますが、1,000万円以下であれば控除の対象となります。
(2)年収150万円、年収201万円にも壁があり(配偶者特別控除の壁)
パート、アルバイトの給与がある配偶者(例えば、妻)の年収が103万円を超えても150万円以下(年収150万円の壁)であれば、その夫の所得税を計算する際に38万円の配偶者特別控除の対象となります。
今回の税制改正で、この103万円が123万円に、150万円が160万円の壁に移動します。
なお、夫の合計所得金額が900万円以下の場合は控除額は38万円ですが、900万円を超えると控除額が段階的に減らされますが、1,000万円以下であれば控除の対象となります。
配偶者(例えば、妻)の年収について150万円(今後は160万円に移動)を超えると控除額が段階的に減らされていきますが、201万円以下であれば控除の対象となります。
配偶者控除、配偶者特別控除に関する壁を図示すると以下のとおりです。

2. 子供などを扶養する親の税金に関わる壁
(1)もう一つ違う「103万円の壁」があり(特定扶養控除の壁)
16歳以上の生計を一にする配偶者以外の親族を扶養する人は扶養控除の対象となります。
特に、19歳以上の23歳未満の大学生などを扶養している親などは、所得税に関して63万円の特定扶養控除を受けることができます。
ただし、これまではその大学生などがアルバイトなどで年収が103万円を超えると特定扶養控除を受けられなくなっていました(年収103万円の壁)。
今回の税制改正によって、「特定親族特別控除」という制度が導入され、大学生などのアルバイトなどの年収の上限を150万円に引き上げ、それまでは63万円の控除を受けられるようになります。
また、その年収が150万円を超えた後も、控除額が段階的に減らされていきますが、188万円まで控除が続くことになります。
特定扶養控除、特定親族特別控除に関する壁を図示すると以下のとおりです。

3. 手取りを増やすためにはどうしたら良いのか
パートやアルバイトで働く時間を増やすことによって収入は増加しますが、本人の所得税などの納税が必要になってきたり、配偶者や親の税控除が適用されなくなったりすることがあります。
今回の税制改正は、その壁の金額を引き上げることによって、もっと働きたい方々にとって働く時間を増やしやすくするものです。
手取りが増えるかどうかは、収入の増加、納税額の増加や扶養者の税控除額の減少を差し引きしてプラスになるかどうかを考えていく必要があります。
特に、特定扶養控除については、所得税63万円、住民税45万円と控除額が大きいために、世帯全体の手取りの逆転を起こさないように、大学生などはアルバイトの収入が103万円に収まるように就業時間の調整を行うことが多かったと思います。
この103万円の壁が150万円に引き上げられることにより、壁をこれまでほど意識せずに働くことが可能になると考えられます。
4. 社会保険料の負担に関わる年収の壁について
実は、手取りを考える上で、もう一つ重要な要素があります。
手取りは、「総支給額-所得税-住民税-社会保険料」で計算されますが、収入、納税額に加えて社会保険料の負担もあわせて考える必要があります。
そこで、もう一つの重要な年収の壁である、「社会保険料の負担に関わる年収の壁」の議論が出てくるわけです。
次回は、この年収の壁について、できる限り分かりやすく説明していきます。