我が国の人手不足は深刻化の一途をたどっていますが、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行っても対応が困難な状況にある産業上の分野について、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるため、平成31年に在留資格「特定技能」が創設されました。
今後、あらゆる産業分野において労働力不足への対応が緊急の課題となる中で、この「特定技能」と技能実習が置き換わる「育成就労」は最もニーズの高い重要な在留資格制度であると考えられます。
一方で、この「特定技能」はすごく複雑な制度です。
現在、16の産業分野が対象になっていますが、先ずは特定技能の全分野共通の制度の総論から分かりやすく説明していきます。
その上で、在留者数の多い重要分野について説明します。
1. 特定技能制度について
特定技能より先に平成5年にできた制度として、「技能実習」がありますが、その制度の目的は、人材育成を通じた開発途上地域への技能等の移転による国際協力の推進です。
これに対して、「特定技能」の制度の目的は、我が国の人材不足分野における人材の確保です。
制度の目的が全然異なることは知っておきましょう。
また、令和9年度から開始される「育成就労」についても、制度の目的は我が国の育成就労産業分野における人材の確保となっています。
特定技能の制度概要については、入管庁の資料を引用すると、以下のようになっています。

次回以降の在留資格該当性のところで説明しますが、上記のように、特定技能が認められている産業分野を「特定産業分野」と言いますが、現在、以下の16分野が対象になっています。
さらに、令和9年に「リネンサプライ」、「物流倉庫」、「資源循環」の3分野が開始されることが予定されています。
特定産業分野(16分野)
①特定技能1号、2号の両方で受入れ可能分野
ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
②特定技能1号のみで受入れ可能分野
介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業
なお、特定技能1号と2号は別の在留資格であり、以下のような資格です。
特定技能の種類
①特定技能1号
特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
②特定技能2号
特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
2. 特定技能の技能水準
上記の入管庁の資料の中に、【就労が認められる在留資格の技能水準】という図がありますが、「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」の技能水準については、注意が必要です。
特定技能資格に関する名著である弁護士の山脇康嗣先生の「特定技能制度の実務」のP1によると、以下のようにあります。
特定技能については、各分野の運営要領によると、いずれの分野においても、「主たる業務」とあわせて行う限りにおいて、(当該業務に関して当該事業所において日本人従業員が通常従事する)関連業務に付随的に従事することは差し支えないとされる、その結果、付随的であれば、事実上の非熟練労働にも従事することが認められる場合がある。
つまり、専門的・技術的分野の技能水準の高さは、「技術・人文知識・国際業務」>「特定技能2号」>「特定技能1号」となります。
新しい産業分野で特定技能の資格が設けられるにつれて、技術・人文知識・国際業務の在留資格の決定に係る運用の明確化及び透明性の向上が一層求められています。
令和8年1月には、入管庁から、在留資格「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」の違いについて以下のような資料が公表されています。

例えば、16分野のうちの工業製品製造業、建設業等において、特定技能2号の在留資格の付与が本格化するにつれて、工程管理のような管理業務の在留資格については、技術・人文知識・国際業務ではなく、特定技能2号の取得で対応することになってきています。
つまり、技術・人文知識・国際業務の在留資格については、自然科学の分野又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務であって、専門的・技術的分野の高い技能水準のものでないと認められなくなることが予想されます。
技術・人文知識・国際業務の在留資格を得た後に、当該在留資格で行うことができない単純労働に就労させる偽装技術・人文知識・国際業務の問題について、雇用主の不法就労助長罪が一層厳しく問われるようになるのは言うまでもありません。
3. 特定技能1号と2号の違い
特定技能1号と2号の主な違いについて触れておきます。
(1) 在留期間について
特定技能1号は、3年を超えない範囲内で法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとの更新です。
特定技能1号は、通算(妊娠、出産、育児その他のやむを得ない事情により業務に従事することができなかった期間を除く)で上限5年(相当の理由があると認められる場合は6年)までとなります。
特定技能2号は、3年、2年、1年又は6か月ごとの更新で、更新回数に制限はありません。
つまり、ずっと更新できれば、雇用期間に制限はありません。
(2) 技術水準及び日本語能力水準について
特定技能1号については、技能水準については1号に対応した技能試験に合格する必要があります。
日本語能力水準については日本語能力試験のN4以上等の日本語試験に合格する必要があります。なお、介護、自動車運送業(タクシー・バス)及び鉄道(運輸係員)分野は別途要件があります。
また、関連する職種・作業に係る技能実習2号を良好に終了した外国人は、技能試験及び日本語試験を免除されます。
関連しない職種・作業に係る技能実習2号を良好に終了した外国人は、日本語試験のみを免除されます。
特定技能2号については、技能水準については2号に対応した技能試験に合格する必要があります。
日本語能力水準については、漁業及び外食業分野については日本語能力試験のN3以上の合格が必要なことを除き、試験による確認はありません。
(3) 家族の帯同について
特定技能1号は基本的に認められません。特定技能2号については、要件を満たせば、家族(配偶者、子供のみ)の帯同が認められ、在留資格「家族滞在」が付与されます。
(4) 法定された支援の実施について
特定技能1号は、受入れ機関又は登録支援機関による入管法で規定された支援の対象となります。
特定技能受入機関が1号特定技能外国人ごとに1号特定技能外国人支援計画を作成して支援する必要があります。
支援の実施については、登録支援機関に委託することも可能です。
特定技能2号は対象となりません。
4. 上陸許可基準該当性
上陸許可基準は、日本に上陸するときの許可、その後の在留資格の変更や在留期間の更新を行うときの許可の基準になります。
以下のように、上陸基準省令の「特定技能」の下欄において、特定技能1号と2号で分けて規定されています。
以下の⑧にあるように、特定技能1号、特定技能2号ともに、16の特定産業分野のそれぞれの所管大臣が上乗せ基準、つまり、追加の基準を告示として策定できるように委任規定を置いています。
