特定技能介護について2回にわたって説明してきましたが、特定技能介護には特定技能1号しかなくて、特定技能2号はありません。
なぜなら、介護分野には、熟練した技能の保有者に対する在留資格として、介護福祉士資格取得者については「介護」という別の在留資格があるためです。
今回は、介護分野の在留資格として、「特定技能」ではなく、最も上位資格である「介護」について、わかりやすく説明いたします。
いつものように、在留資格該当性、上陸許可基準適合性と順番に説明していきます。
1. 在留資格該当性
在留資格「介護」に係る在留資格該当性については、入管法別表第1の2の表の介護の項の下欄に以下のように規定されています。訪問介護も含まれます。
入管法別表第1の2の表
本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動
介護福祉士は、現場で働く介護職としては最上位にあたる資格です。
介護福祉士とは、社会福祉士及び介護福祉士法によって定められた介護分野で唯一の名称独占の国家資格です。
同法第2条第2項において、「「介護福祉士」とは、第42条第1項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう。」と規定しています。
ここで言う厚生労働省令、つまり、社会福祉士及び介護福祉士法施行規則で、介護福祉士が医師の指示の下に行われる行為(喀痰吸引等)として定めるものは以下のとおりです。
・口腔内の喀痰吸引
・鼻腔内の喀痰吸引
・気管カニューレ内部の喀痰吸引
・胃ろう又は腸ろうによる経管栄養
・経鼻経管栄養
介護福祉士に対して、介護士と言うのは、介護の仕事に従事する人全体を指す呼び方です。
介護士のステップアップとしては、初めに、入門的な資格として位置付けられている「介護職員初任者研修」を受講して、資格を取得し、次に、介護職員初任者研修の上位資格に位置付けられる「介護福祉士実務者研修」を受講して、資格を取得します。
そして、さらに上位に位置付けられている国家資格の「介護福祉士」取得を目指します。
「介護福祉士」を取得すると、介護業務について幅広い知識や高い技術を身につけているとして、介護スタッフを現場で束ねるリーダーの役目を果たすことも期待されます。
2. 上陸許可基準適合性
在留資格「介護」については、在留資格該当性に加えて、我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して、法務省令(上陸基準省令)で定める基準(上陸許可基準)に適合しないと原則として上陸できません。
「介護」については、上陸基準省令の表において、以下のような基準が規定されています。
上陸基準省令の表
申請人が次のいずれにも該当していること。
一 申請人が社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)第四十条第二項第五号又は社会福祉士及び介護福祉士法施行規則(昭和六十二年厚生省令第四十九号)第二十一条第三号に該当する場合で、法別表第一の二の表の技能実習の項の下欄に掲げる活動に従事していたときは、当該活動により本邦において修得、習熟又は熟達した技能等の本国への移転に努めるものと認められること。
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
この上陸基準省令は令和2年に従来の規定が改正されて施行されたものです。具体的には、以下の入管庁の資料のとおり、従来は、
①養成施設ルート 【介護福祉士養成施設(専門学校など)を卒業し,介護福祉士となるルート】
だけだったのが、
②実務経験ルート 【「実務経験3年以上」+「実務者研修」(450時間以上かつ6月以上)」を経て、介護福祉士となるルート(これに準ずるルートを含む。)】
③福祉系高校ルート 【福祉系高校を卒業し,介護福祉士となるルート】
④EPA(経済連携協定)ルート 【経済連携協定(EPA)により入国し,介護福祉士となるルート】
で介護福祉士となった者についても,在留資格「介護」を付与することとなりました。

なお、上記の上陸基準省令第一号の規定のように、②の実務経験ルートのうち、技能実習生がこのルートで介護福祉士となった場合は、技能実習制度の制度趣旨から、在留資格「介護」を決定する際に、技能実習で学んだ技能等について本国への移転に努めるものと認められることが要件となります。
在留資格「介護」に係る在留期間は、5年、3年、1年又は3月です。要件を満たす限りは、在留期間の更新に上限はありません。
入管庁のWebサイトに、外国人介護人材受入れの仕組みとして、特定活動(EPA)、在留資格「介護」、技能実習、特定技能1号の4つの在留資格をまとめた以下のような図があります。

また、この4つの在留資格により受け入れた外国人介護人材の比較表が厚生労働省のWebサイトにありましたので、まとめとして簡略化したものを以下のとおり載せておきます。





3. 最後に
以前、私の働く会社の同僚で、社内で一二を争う優秀な社員がいましたが、母親が寝たきりになり、訪問介護を探したのですが、全く見つかりませんでした。
父親も既に亡くなっており、他に介護する人もいなかったために、彼は介護のために会社を辞めました。
将来は会社を背負うような非常に優秀な人材であったのに、残念でたまりません。
しかも、これはすごい地方の話ではなくて、千葉県の大きな都市での話なのです。
いくら人材募集しても都市部でも介護人材が集まらない状況になってきています。
介護サービスの費用は介護保険で賄われているので、他業種の人材を引きはがすような法外な報酬も出せません。
なお、第12回で見たように、特定技能は、その契約適合性を満たすためには、特定技能外国人の報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であることが求められます。
日本人の雇用を奪わないようにという配慮だと思いますが、そもそも介護分野などはいくら人材募集しても日本人の応募自体が全くないという悲惨な状況になってきています。
今後こういう親の介護のために勤めている会社を辞めなければならないような事態が日本のいたる所で起こるのではないかと懸念されます。
日本経済の未来を支える優秀な人材を失うのは未来への損失です。
働きたいのに働けない人を生み出さないように、外国人介護人材の受入れは喫緊の課題だと思います。