名古屋、博多、新宿、池袋、中野、五反田、津田沼など、全国で人手不足、建設資材高により、大規模な再開発の工事が中止になっています。
こうした予算がかけられる大都市の建設工事が中止になっているのですから、地方都市での建設工事は言わずもがなでしょう。
また、高度経済成長期以降に整備された道路橋、トンネル、河川、下水道、港湾等について、今後20年で建設後50年以上経過する老朽化した施設の割合が加速度的に大きくなります。
埼玉県の下水道の陥没のような大事故が全国で発生することも懸念されます。
建設、土木分野の人手不足は我が国にとっての極めて深刻な課題です。
建設分野で活躍する外国人技能者の在留者数は、2024年で約14.6万人で全建設技能者数の約5%を占めています。
在留資格別では、技能実習が最多(2024年:約10.7万人)、特定技能1号外国人が約3.8万人、特定技能2号外国人は非常に少なく213人(いずれも2024年12月末時点)となっています。
今回は建設分野の人手不足の最後の希望である特定技能建設を取り上げます。特定技能制度の中では、建設分野は特有の上乗せ基準もあり、非常に複雑です。
可能な限り、わかりやすく説明いたしますが、分からないところがある場合は、入管制度を専門にする行政書士等に相談するのが良いでしょう。
いつものように、在留資格該当性、上陸許可基準適合性と順番に説明していきます。
1. 在留資格該当性
在留資格該当性とは、外国人の方々が日本において行おうとする活動が、入管法別表第一の下欄に掲げる活動、又は別表第二の下欄に掲げる身分又は地位を有する者が行う活動のいずれかに該当することを求めるものです。
(1) 業務区分該当性
特定技能の業務について、いかなる技能を必要とするものであるかについては、特定技能分野等省令において、基本方針にのっとりそれぞれ分野に係る分野別運用方針及び運用要領で定める水準を満たす技能とすると規定されています。
建設運用要領(ガイドライン)によると、建設分野において設定する業務区分及び当該業務区分において従事する業務は、以下の国土交通省の資料のとおりです。
業務区分は、「土木」「建設」「ライフライン・設備」の3つがあります。
いずれの場合も、これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:作業準備、運搬、片付けのような試験等によって専門性を確認されない業務)に付随的に従事することは差し支えありません。

建設分野における特定技能制度では、(2)受入機関適合性で述べるように、1号特定技能外国人の雇用に際しては、国土交通大臣による建設特定技能受入計画の認定を受けることが必要です。
特定技能外国人を従事させたい建設業の種類ごとに、それぞれ対応する業務区分の認定を受けることで、当該建設業に係る工事に従事させることができるようになります。
また、以下の国土交通省の資料にありますように、当該業務区分に適合する業務内容であれば、作業を行う現場の種別を問わず従事可能です。
例えば、以下の例で言うと、左の【参考1】にあるように「舗装工事業」に従事させるために業務区分の「土木」で認定を受けた場合、右の【参考2】にあるように、業務区分の「土木」に該当する現場、つまり【参考2】の業務区分「土木」の下にある「さく井工事業」から「機械器具設置工事業」までの12の現場に入場して工事に従事可能です。
令和元年に特定技能外国人が工事現場に入場する際の元請企業と下請企業がそれぞれ果たすべき役割が明確化され、元請企業は、下請企業との請負契約に基づく工事(作業)が在留資格上の業務区分に適していることを確認することが必要になりました。

(2) 受入機関適合性(契約適正履行確保基準等)
受入機関適合性、すなわち、適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係る基準及び適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係る基準については、建設告示の第2条に規定されています。
以下の国土交通省の資料にありますように、建設分野における特定技能制度では、特定技能の業種横断の基準に加え、建設分野の特性を踏まえた上乗せ基準がこの建設告示第2条として設定されています。
その中心となるのが、1号特定技能外国人の雇用に際しては、国土交通大臣による建設特定技能受入計画の認定を受けることが必要なことです。
建設特定技能受入計画の認定要件は建設告示第3条に規定されていますが、主な内容が以下の資料の下半分に紹介されています。
この他に、1号特定技能外国人の総数が常勤の職員(1号特定技能外国人及び技能実習生を含みません。)の総数を超えないことが条件になっています。

このうち、建設業者の皆さんが特に注意すべきものをいくつか説明します。
ア 受入企業及び1号特定技能外国人を建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録していること
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、以下の資料にように、国土交通省が推進する建設技能者の資格や現場での就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積し、技能・経験に応じた適切な処遇につなげようとする取組です。
CCUSを活用することで、特定技能外国人に対する、 日本人と同様の、客観的基準に基づく技能と経験に応じた賃金支払の実現や、工事現場ごとの当該外国人の在留資格・安全資格・社会保険加入状況の確認、不法就労の防止等の効果が得られます。
特定技能所属機関になろうとする者は、あらかじめCCUSに登録する必要があります。

イ 1号特定技能外国人に対し、同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬を「安定的に」支払い、技能の習熟に応じて昇給を行うこと
報酬関係に関しては、運用要領に非常に細かく注意事項が規定されていますので、しっかり読み込んでおく必要がありますが、いくつか紹介します。
先ず、報酬の額についてですが、1号特定技能外国人は技能実習修了者と同様に、既に一定程度の経験又は技能等を有していることから、相応の経験を有する者として扱う必要があります。
なお、後ほど2.(1)で述べる建設分野特定技能1号評価試験又は技能検定3級合格者は3年程度又は5年程度の経験を有する者として扱うこととします。
このため、報酬予定額を決める際には、技能実習2号修了者であれば概ね3年間、技能実習3号修了者であれば概ね5年間、日本に在留し技能実習を修了した者であることから、従事しようとする業務について、概ね3年又は5年程度の経験者として取り扱う必要があります。
次に、報酬の支払い形態ですが、特定技能外国人については安定的な報酬を確保するため、仕事の繁閑により報酬が変動しないこと、すなわち月給制によりあらかじめ特定技能外国人との間で合意を得た額の報酬を毎月安定的に支払うことが必要です。
特定技能所属機関で雇用している他の職員が月給制でない場合も、特定技能外国人に対しては月給制による報酬の支払が求められます。
また、昇給についても、勤続年数を条件とする毎年の所定内賃金の上昇等が必須である他、資格・技能検定を取得した場合、CCUSの能力評価レベルがステップアップした際の昇給を行う場合には、それらの昇給見込額等をあらかじめ特定技能雇用契約及び計画に記載しておくことが必要です。賞与、各種手当や退職金についても日本人と同等に支給する必要があります。
ウ 賃金等の雇用契約に係る重要事項について、「所定の様式」による書面で、外国人が十分に理解することができる言語で事前に説明していること
特定技能所属機関は、「必ず」建設告示の様式第2を用い、1号特定技能外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等について、当該外国人が十分に理解することができる言語を用いて説明し、当該契約に係る重要事項について理解していることを確認した上で、特定技能雇用契約を締結する必要があります。
2. 上陸許可基準適合性
建設分野において特定技能の在留資格で受け入れる外国人は、以下に定める試験に合格した者(2号特定技能外国人については、実務経験の要件も満たす者)となります。
また、特定技能1号の在留資格については、建設分野に関する第2号技能実習を良好に修了した者は、必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているものとして取り扱われます。
下の図で言うと、右下の矢印(技能実習等からの切替ルート)のところが該当します。

(1) 1号特定技能外国人
建設分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、次のア及びイに定める試験に合格した者とします。上の図で言うと、左下の矢印(試験合格ルート)のところが該当します。
ア 技能水準
次のいずれかの試験に合格することが必要です。
技能水準をクリアするために必要な試験
① 「土木」「建設」「ライフライン・設備」の建設分野特定技能1号評価試験、またはそれぞれに該当する所定技術の技能検定3級
(所定技術については建設運用方針の別表1を参照)
② 令和9年度から開始する育成就労からの切替ルートとして、育成就労終了までに、「土木」「建設」「ライフライン・設備」の主たる技能のそれぞれに該当する所定技術の技能検定3級
(所定技術については建設運用方針の別表3を参照)
イ 日本語能力水準
「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上の水準と認められるもの
なお、日本語教育の参照枠に関して、JLPTとの対応関係等は外国人雇用の第15回ブログをご覧ください。
(2) 2号特定技能外国人
建設分野において特定技能2号の在留資格で受け入れる外国人は、次のア(ア)及びイに定める試験に合格した者であり、かつ、ア(イ)に定める実務経験の要件も満たす者とします。
上の図で言うと、特定技能1号から特定技能2号への中央の矢印のところが該当します。
ア 技能水準
(ア) 技能水準
次の試験に合格することが必要です。
技能水準をクリアするために必要な試験
「土木」「建設」「ライフライン・設備」の建設分野特定技能2号評価試験、またはそれぞれに該当する所定技術の技能検定1級
(所定技術については建設運用方針の別表2を参照)
(イ) 実務経験
建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験が要件です。
イ 日本語能力要件
「日本語教育の参照枠」のB1相当以上の水準と認められるもの
3. 最後に
特定技能制度の難しさは、入管法や関係省令の共通的な制度のほかに、さらに各分野での上乗せ基準があることです。
上乗せ基準の詳細を把握するためには、建設分野を例にとると、以下のような文書を読み込む必要があります。
ただ、構造的にも内容的にも非常に難しいので、入管業務を専門とする行政書士等にご相談することをお薦めします。